頑張らなくても、整っていく—柔道家・角田夏実×&MEDICAL|日常に溶け込むコンディショニングの新しいかたち

世の中にあふれるリカバリー製品の多くは、疲れた身体に何かを「加える」発想でつくられている。着圧で血流を促す、電気で筋肉を刺激する、あるいは振動でほぐす。トップレベルの競技者にとって、それらは確かに必要不可欠な武器だ。

しかし一方で、そうした能動的なケアは、往々にして「使うぞ」と構えた時間を前提にしている。トレーニング後の限られた時間、あるいはスイッチを切り替えた特別なリカバリータイム。そこに毎回、身体ときちんと向き合える余裕があるとは限らない、という現実もある。

&MEDICALが向き合っているのは、そこではない。ブランドの根幹にあるのは、「支える」「鍛える」「ほぐす」という3つの軸。暮らしの中に必ずある、ごく自然な日常動作そのものを、心地よい「整え」へと変えていくことだ。それは一時的な「回復」や「治療」とは少し異なる。もっと静かで、もっと日常の風景に近い、コンディショニングの新しいあり方である。

この「生活動線の中に落とし込む」というプロダクトコンセプトに対し、強い共感と実感をもって言葉を重ねてくれたのが、日本を代表する柔道金メダリスト・角田夏実さんだ。

柔道家として、身体と向き合ってきた経験

柔道という競技は、単に技を競う世界ではない。相手の力を感じ取り、自分の身体のわずかなズレを修正し続ける競技だ。だからこそ、角田さんが身体について語るとき、話題は自然と「重心」や「軸」へと向いていく。それは理論として学んだ知識だけではなく、長年畳の上で積み重ねてきた経験の中で、身体に刻まれてきた感覚そのものである。

「柔道では、丹田を大事にしているので、腰回りの力の入れ方だったり、重心の取り方だったりっていうのは、すごく大事にしています」

丹田(たんでん)とは、おへその下あたり、身体の中心とされる場所。柔道ではこの部分が安定していなければ、相手の力を受け止めることも、自分の軸を通すこともできない。

しかし、世界の頂点を知る彼女であっても、日常とのギャップを率直に語る。「姿勢よく座らなきゃなとは思うんですけど、腰が痛いなとか思う時もあるし、自分の身体にちゃんと向き合うことって難しくて、普段、自分で身体を意識できてないんですよね

さらに、競技の中でさえも、そのコントロールは容易ではないという。「丹田を鍛える、意識し続けるというのは、実はなかなか難しいことなんです。意識しても、できない部分でもあって」。だからこそ角田さんの関心は、「意識し続ける身体」ではなく、意識しなくても自然に正しい位置へ戻っていく環境へと向いていった。

日常動作を通じて、身体が自然と「居心地のいい場所」を再発見していく。環境によって導かれた感覚は、畳の上で瞬時に正しい判断を下すアスリートの身体感覚と、どこか似通っているのだ。

「頑張らない」ことが、長く現役を続けるための秘訣

ハードコンタクトスポーツである柔道において、筋肉を「固めてしまうこと」は致命的なリスクに繋がる。角田さんの競技人生は、常に自分の身体をどう柔軟に保つかという戦いでもあった。

若い頃から、筋肉をただ鍛えるよりも、とにかくストレッチしろと周囲からもめちゃくちゃ言われてきました。固めちゃうよりも柔軟性をつけた方がいい。年齢が上がってくるとだんだん身体は固まりやすくなり、それが怪我にも繋がりやすくなるので。身体の循環を良くして、むくみを取っていくことが、結果として良いコンディション維持につながると考えています

実際に彼女は、最年長で世界の頂点に立った柔道家の一人である。その長いキャリアを支えてきたのは、強度の高いトレーニングだけではない。日々のストレッチによって身体の状態を整え続けてきた積み重ねにある。

彼女のYouTubeを見ると、ストレッチに費やす時間の長さに驚く視聴者も多い。それは単なる準備ではなく、身体のコンディションを維持するための重要なルーティンだ。

ストレッチは筋肉をほぐすだけでなく、血流や代謝を促し、身体の循環を整える。結果として、むくみの軽減やコンディションの安定につながり、日々の身体を“滞らせない”ためのベースをつくっている。こうしたケアが、角田さんにとっては特別な努力ではなく、あくまで日常の一部である。

ストレッチやケアが「仕事」の一部である彼女にとって、プライベートな時間は、さらなる努力を強いる場であってはならない。オフの時間まで「頑張ってケアをする」という切迫感なく、自然に身体が整っていく。

「頑張らなくてもいい環境」こそが、彼女が長いキャリアの中でたどり着いた、コンディショニングの本質だ。

【KURAシリーズ】
座っている時間さえも、骨盤ケアのひとときに変える

競技以外の時間が増えた今、角田さんは「座る」という行為そのものが、思っている以上に身体に影響していることを実感している。「(取材などで)座っている時間は増えているんですけど、ただ座っているだけで、ちゃんと休めている感じでもなくて」

身体は止まっていても、どこかに力が入っている。そうした感覚の中でKURA SOFAに腰を下ろしたとき、角田さんがまず感じたのは「委ねられる」という感覚だった。

この椅子がポッと置いてあるだけで、ちょっとここに座ろうかな、とか。わざわざ出してきて、ということをしなくても普段に置いておけるので、本当に使いやすいなって思いました。デザインがやっぱり好きで

KURAシリーズの発想の核にあるのが、「鞍(くら)」だ。乗馬における鞍は、姿勢を意識して正すための道具ではない。揺れる馬の上でも、乗り手の身体の軸がブレないよう、骨盤と重心を支え続けるために設計されている。KURA CHAIRも同じように、「姿勢を良くしよう」と考えなくても、身体を預けているうちに、一番楽で、安定する位置へと導かれていく。

柔道は右組み、左組みってあって、技をかける方向が毎回同じなので、どうしても偏りがちなんですね。それで身体のバランスが結構悪くなっちゃって、腰が痛くなったり、肩こりしたりとか、そこから膝の怪我につながったりもするので

治療に行って整える前に、座るという日常動作の中で、少しずつバランスを戻していく。それは、競技者として身体を酷使してきた角田さんにとって、無理のない、現実的なコンディショニングのかたちだった。

【MALLOWシリーズ】
しまわないから、体幹を呼び覚ます習慣が続いていく

コンディショニングを日常にする上で、角田さんはツールとの「距離感」を大切にしている。バランスボールについて、彼女は率直にこう語る。「ちょっと家でトレーニングしようとか、ストレッチするのにとても便利なんですけど、人が来たり、YouTubeを撮る時に奥にしまっちゃって。で、そこからまた出さなくなるんですよね

オーバル型バランスボール「MALLOW」シリーズは、インテリアに溶け込むことを前提に設計されている。「これなら全然置いてあっても自然ですし。横にしたらオットマン(足置き)みたいにも使えたり。座るとしっかり体幹が使われて、背中で転がすと自然と鍛えられる。それがちょっと楽しいんですよね

洗練されたデザインによって、鍛えるための「心理的ハードル」が解消されたのだ。トレーニングを「特別な行事」から「日常のついで」へと変える。「腹筋みたいにきつい感じはないんですけど、次の日に、あ、ちょっと効いてるな、って感じはあります」。その結果として、継続的なインナーマッスルを「鍛える」習慣が、無理なく生活に溶け込んでいく。

【KAMOLEG】シリーズ
家の中で動く、そのすべてをトレーニングに変える

私、結構家の中でバタバタ動くんで、切り返しの時に、すごい体幹使ってるな、っていうのはあります

キッチンに立つ、掃除をする、洗濯物を取り込む。そんな日常の動作の中で、自然と体幹が働く。KAMOLEG2.0の最大の特徴は、独自の形状をしたラウンドソールにある。あえて接地面を少なくし、不安定な状態をつくることで、身体は無意識にバランスを取ろうとする。その結果、普段使われにくい体幹や脚の筋肉を刺激する仕組みだ。

柔道は素足で畳を掴むスポーツなので、足の指の動きには敏感です。KAMOLEG2.0は指先がしっかり動くように設計されているので、歩くたびに指を使って床を掴むような意識が入ります。また、かかとから着地してつま先で蹴り出すという、正しい歩行動作へ自然に導いてくれる。分厚いので、どんな動きをしても安心感があります。ずっと守られてる感じがあって、履き心地もいいですね

毎日の「歩く」という動作を効率的なエクササイズへ。日常的に家の中を動き回る人、特に家事の多い主婦の生活動線とも相性がいいのが、KAMOLEG 2.0だ。

取材現場で気づいた、もうひとつの役割
― KAMOLEG 3.0という選択

最近は、取材や撮影の現場で、スーツやジャケットを着る機会も増えている。
スーツでの取材が増えると、足元だけラフな感じになるのはちょっと気になりますよね。その点、KAMOLEG 3.0は見た目がすごくシンプルなので、パンツスーツだとちょうどかかとの部分が隠れて違和感が出にくいのがいいです

KAMOLEG 3.0は、屋外履きとしても使用できるモデルだ。仕事の現場でも日常でもフィットネスが身近になり、角田さんのライフスタイルに自然に馴染んでいる。

【BARS】
NASAの「中立姿勢」で、すべてを預けてリフレッシュ

一日の終わり、角田さんが最も「自分をいたわる」心地よさを感じたのが、電動ソファベンチ「BARS」だ。ボタンひとつでNASAが提唱する、身体への負荷が最も少ないとされる「中立姿勢」を再現する。
膝の位置と、心臓の位置が同じ高さになるんですよね。どこにも体重がかかっていない感じがして、すごい気持ちいいです

身体を重力から解放するこの姿勢は、従来の椅子とは支え方が決定的に異なる。心臓と膝が同じ高さになることで、まるで無重力空間に浮かんでいるような脱力状態を生み出す。「背もたれだけで動く椅子だと前にずり落ちちゃうんですけど、膝裏がしっかり支えられてるから、すごい安定感あって、気持ちいいです

支えられることで、ようやく力が抜ける。「道場で練習した後とか、ちょっとした空き時間にリフレッシュできたらいいなって思いました

人は意識的に「休む」時間をつくらなければ、身体はなかなかオフにならない。「健康を考えたインテリア」ブランドのBARSが提供するのは、ボタンひとつで強制的に「預ける」状態をつくる仕組みだ。頑張ってリカバリーするのではなく、環境に委ねることで回復していく。それは、この取材を通して角田さんが求めてきたことの答えでもある。

「頑張らなくても戻れる場所」という共通の理想

インタビューの最後、角田さんは&MEDICALの製品群を眺めながら、その存在意義についてこう語った。「特別なことをしてる感覚はないんですけど、気づいたら整っている。それがなんかすごくこう、デザインにも表れてるなと思って。そういうもののほうが、長く使えると思います

角田夏実さんの言葉を通して見えてくるのは、トップアスリートが求めているのは、必ずしも強い刺激や特別な装置ではない、ということだ。むしろ、生活のなかで無理なく使え、気づけば身体にとって良い状態が積み重なっていること。その意味で&MEDICALは、暮らしの質を通じてコンディションを支えるブランドだと言える。

角田さんには、地元に自分の柔道場を開設するという大きな夢がある。「柔道場ってちょっと怖いイメージがあると思うので、アットホームな場所にしたいですね

子どもたちが柔道を身近に感じ、誰もがふらっと立ち寄って健やかに過ごせる温かな居場所。鍛えることと、休むことが、自然に並んで存在する場所。その思想は、角田夏実さんの夢と&MEDICALのミッションとで、深く重なっている。

Hair & Make-up: Ayumi Takahashi
Styling: Maho Haruki
Wardrobe: Soja|@soja.tokyo
Text: Kenichi Matsuse
Location: THE GRANDUO FUTAKOTAMAGAWA | https://thegranduo.com/

*本記事は2026年5月2日に実施されたインタビューをもとに構成されています。

角田夏実(つのだ・なつみ)
柔道家。1993年千葉県生まれ。
2024年パリ五輪柔道女子48kg級で金メダルを獲得。
切れ味鋭い「巴投げ」を武器に、世界選手権でも複数回優勝を果たしている。
明るいキャラクターとストイックな姿勢で多くのファンを持ち、
YouTubeでも積極的に情報発信を行っている。現在は地元での柔道場開設に向けて準備中。
インスタグラムアカウント| @tsunoda_natsumi

 

*本記事で紹介したプロダクトは、使用環境や体調によって感じ方が異なります。今後も、異なるバックグラウンドを持つ人の体験を通じて、&MEDICALの製品がどう日常に溶け込むのかを記録していく予定です。